日本の運送業界は、高齢化と人材不足が深刻な問題となっています。総務省の「労働力調査」によると、2022年の運輸業・郵便業においては全体の約49%が50歳以上、約74%が40歳以上と統計データに出ています。全業種では約43%が50歳以上、約66%が40歳以上となるので、運送業界は他の業種に比べて特に高齢化が進んでいると言えるでしょう。
この高齢化の傾向は、運送業界が直面している人材不足と相まって、業界全体の持続的な発展に大きな懸念となります。高齢者やベテラン社員は知識・経験が豊富であることが多いですが、身体的な負担や働き方の変化に対応することが難しくなる傾向があります。
運送業界の人材不足にはいくつかの原因があり、まず第一に少子高齢化により労働人口が減少していることが挙げられます。また、運送業は長時間労働や低賃金などのイメージが強く、若者が敬遠しているという問題もあります。さらに、近年は自動運転技術の開発が進んでおり、トラック運転者の需要が減少する可能性も懸念されています。
今後2024年問題などもあるため、主に残業時間規制が原因で現状の社員数では業務が回らなくなり、人材不足がさらに加速する可能性もあります。
このような状況の中、運送業界各社は人材不足対策に取り組んでいます。ここではその一例を提示します。
長距離輸送の改善
従来1つの工程であった箇所を複数人で分担する「中継輸送」や、複数の企業や事業所が連携し同じトラックやコンテナに荷物を積む「共同配送」によって勤務時間や輸送距離を短縮。
また大型トラック2台分の荷物を運ぶことができる「ダブル連結トラック」にて、輸送量を増加するなどの試みがあります。
倉庫業務の効率化
ロボット導入や無人フォークリフト開発、ピッキング支援のAR(拡張現実)システム導入など、少数人数でも数をこなせるよう無人化や省力化が進んでいるようです。またロボットや無人フォークリフトが重労働や危険作業を代替することで、従業員の健康面の改善をも狙うことができます。他にもアシストスーツを用いて人間の動作を補助する試みもあるようです。
宅配業務の効率化
EC需要が増した昨今においてはラストワンマイルの効率化も求められます。個人事業主や副業による短距離配送(自転車やバイク便含む)や、店舗受け渡しも増えています。
勤怠管理のデジタル化
勤務時間や残業時間、有給休暇の取得状況などをデジタル管理し、管理業務の効率化と働き方改善を狙います。
物流システムの導入
物流システムを導入することで、作業の効率化やミスの削減が図られ、また人手不足による業務の遅延を防ぐこともできます。
採用対象の拡張
資格取得制度や教育制度を整えたり、教習所を自社内に置くことで、採用した未経験者を一から教育する企業もあります。他業界ほどではないですが、全体的に外国人の従業員も増えているようです。
また女性ドライバーを積極的に採用する企業も年々増えています。女性ドライバー採用のための施策として「喫煙所を設けて分煙、社内と車内の禁煙」「託児所を設置」「育休産休制度の充実」「休日数の向上」などが実施されているようです。また見落としがちな点ですが、トイレや休憩所をキレイに保つことも好印象なようです。
採用経路の強化
採用経路としては従来通り求人サイトや求人誌などのサービスを使うとともに、自社採用サイトを開設し、信頼感を上げマッチング率を高めることも必要になってきています。とりわけ若年層や未経験者層の採用を考えると、自社サイトの有無はかなり大きな影響となります。
また自社の従業員から友人や知人などを紹介してもらう「リファラル採用」も重要な要素となります。労働環境を改善し、従業員満足度を上げることがリファラル採用に繋がります。
まとめ
上記の通り、いずれも一朝一夕で実現できることではありません。比較的取り掛かりやすいものには採用の強化、長期的に取り組むべきことには労働環境やシステムの改善があると言えます。
運送業界以外にも人材不足は加速し、どの業界も変化を求められています。短期的・長期的視点から、各社継続的な対策を講じていくことが重要です。
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