時折ニュースなどで「景品表示法」について報道されることがありますが皆さんはこの法律についてご存知でしょうか? 昨今はソーシャルゲームのガチャと言われるもので話題になることもありました。
景品表示法とは、正式には「不当景品類及び不当表示防止法」といい、不当な広告や表示を規制することで一般消費者を保護することを目的としたものです。不当な誇大広告を防止することで、消費者はよりよい商品・サービスを選択でき、また企業間の競争も適正なものに維持されます。
「景品」という言葉からしてゲームセンターや抽選キャンペーンを想像されるかもしれませんが、この法律はそれらに限ったものではありません。ここでいう「景品」とは有価証券や物品、サービスなど多岐にわたります。ありとあらゆる経済上の利益が対象といっても過言ではないでしょう。対象とする「表示」はチラシ、テレビ、インターネットなどの広告や、商品や容器などのラベル表示、セールストークや実演に至るまで、ありとあらゆる広告と表示に及びます。
不当表示
景品表示法には様々な分類がありますが、中でも求人広告に直結しやすい「不当表示」について概要を説明します。不当表示とは、誇張や嘘で消費者を騙すような表示を禁止するもので、優良誤認表示、有利誤認表示、その他(商品等の内容、取引条件以外の事項に係る不当表示)、の3種類に大きく分けられます。
優良誤認表示
商品やサービスの品質を不当に優れていると見せかけるなど、競争事業者のものより著しく優良であると誤認される表示を言います。
(一例)
・ブランド牛ではないにもかかわらず、ブランド牛であるかのように表示
・調理商品の主たる材料が海外産にもかかわらず、日本各地の名産品材料が特色と大々的に表示
・商品のパッケージを変えただけにもかかわらず、「新商品」「新発売」と表示
有利誤認表示
商品やサービスの価格を不当に安く見せかけるなど、競争事業者のものより著しく有利であると誤認される表示を言います。
(例)
・実際には自社に不利となる割引サービスを除外した料金比較により、自社が一番安いかのように表示
・実際には内容量が変わらないにもかかわらず、競合のものより内容量が多いかのように表示
・メーカー希望小売価格が設定されていないにもかかわらず、メーカー希望小売価格より割引しての販売と表示
その他(商品等の内容、取引条件以外の事項に係る不当表示)
上記優良誤認表示、有利誤認表示に分類されないが、消費者の合理的な選択を妨げるものとして、おとり広告や無果汁の清涼飲料水等についての表示など6種類が指定されています。
求人との関係
求人広告や求人サービスもこの法律の対象外ではありません。法に抵触する可能性のある表記としていくつか例を挙げてみます。
「取扱い企業数○○社!」
⇒のべ社数であったり、はるか以前に取引したが現在は関係がない社数も含めるなど、実態や一般消費者の印象と明らかに異なる場合は優良誤認表示となる可能性があります。
「月給○○万円」
⇒必ず受け取れる額でない場合は有利誤認表示に該当する可能性があります。残業代などを含める際は「月収○○万円以上も可能」といった表記が好ましいです。
「掲載求人数No.1!」「業界最大手の○○企業で社員募集」
⇛ 客観的な調査に基づき、合理的な根拠があるものでない場合は優良誤認表示に当たる可能性があります。いわゆる「ナンバーワン広告」や「No.1表示」と呼ばれるもので、表記するのであれば第三者機関に調査を依頼することが好ましいです。ただしその調査結果であっても、有意に作られたデータと判断されれば優良誤認に当たる可能性があります。
「通常時給○○円のところ、今だけ限定○○円!」
⇒いわゆる「二重価格表示」と呼ばれるもので、仕事内容や条件が異なるなど対象が同一でない場合、初めての求人で「通常時給」なるものが存在しない(もしくは極めて短い)場合などは有利誤認表示に当たる可能性があります。
「勤務地は駅から徒歩○分」
⇛この徒歩でかかる時間は、景品表示法に基づく「公正競争規約(各業界ごとのルール)」により「『道路距離』80mにつき、1分間を要するものとして算出した数値」として不動産の表示に関する公正競争規約に定められています。実態と異なる場合は規約運用団体の措置等が取られる可能性があります。
まとめ
景品表示法と求人広告の関係性は、消費者保護の観点から重要です。正確な情報提供と誤解を招かない表現は、求職者が適切な選択を行うために欠かせません。企業側も誠実な情報開示に努め、公正な競争の環境を保ちつつ、応募者の信頼を築くことが求められます。景品表示法の理念を求人広告にも適用し、透明性と公平性を実現することが、持続可能な雇用環境の構築につながるでしょう。
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